ショーペンハウエル「知性について」(2)

ショーペンハウエル「知性について」の最初の一篇は「哲学とその方法について」となっています。
この訳書そのものは、ショーペンハウエルの「パレルガとパラリポメナ」第二巻「体系的に配列された雑考」の第一章から第五章までの完訳だそうです。
ということは、別々な小論を寄せ集めたわけではなく、著者が一貫してして書いた雑考ということのようです。
内容的に見ても、確かに関連した事柄を述べています。
というより、ほぼ同じことを繰り返し述べているといえます。
もちろん、内容は雑多ですが、言わんとしていることはほぼ共通です。
すでに、最初の一篇「哲学とその方法について」においても、全編通しての主題に触れています。
では、その主題あるいは眼目とすべき点は何かといえば、それはズバリ「知性とは何か」です。
むろん、本の表題が示す通り、全編知性に関係した話ではあるのですが、私が着目した点ということに限っていえば、本論よりも第三篇の末尾に付録として書かれている対話篇が参考になります。
ここで、知性全般についてのショーペンハウエルの考え方が、対話形式で語られています。
第三篇「知性について」のまとめと見てよいのではないでしょうか。

さて、この対話のなかで、哲学が今まで失敗してきた理由として「与えられた世界を一そう深く理解することだけに目標を限らずに、すぐさまそれを超え出て、世界の究極の根拠や永遠の事態を探究しようとするからです」と言い、さらに「我々の知性はこのような問題を思惟することができない。なぜなら知性は有限な事物とか現象、すなわち生命維持に必要なことにしか適合していないからです」と言います。
それに対して一方の相手は「もし知性がそのようなものであり、もっとも関心のある人生の謎の解決に役立たないのであれば、知性すなわち哲学はなんの価値もないものになる」と異議をたてます。
それに答えて「では逆に、知性がもしそのようなことを把握することが出来たとしたら、それは我々の役に立たないだけでなく、生活営為の能力を奪い去ることになるでしょう」と返します。
相手方は再び異議をたて「我々は無常で有限な存在であると同時に、無限で永遠な存在であり、自然そのものの根源的原理でもあります。であるならばそれを探究することにも意義があるでしょう」と述べます。
再び答えて曰く「知性者たる限り、我々は個体的で有限なものである。永遠性にあずかるのは、我々の営為であって、認識ではない」として、また「天才はわずかばかりの知性の過剰によって、実生活上の能力が劣ることになる」と述べます。
この天才という言葉に相手方も共感し「天才とは劇場におかれた望遠鏡のようなものである」ということで両者は目出度く合意します。
なお、ここでいう天才とはショーペンハウエル自身のことであろうことは想像に難くありません。

さて、この対話篇では問題点を浮き彫りにはしているが、最終的な結論にまでは達していないという印象です。
なぜ、天才という言葉で二人が合意しているのかもはっきりしません。
おそらく、ショーペンハウエル自身が天才であることをもって、自らを慰めているのかも知れません。
また、哲学(知性)によって、真理が明らかにされないのならば、哲学自体に意味が無いと見るのが当然であって、それに対する反論には説得力が無いように思えます。
しかしこれも、ショーペンハウエルが哲学者であり、知性に立脚していること考えれば、当然の反論といえるでしょう。
ただ、ここで注意すべきことは「知性者たる限り、我々は個体的で有限なものである」としている点です。
知性と実践とを分け、知性的には世界の本質を捉えることができないが、実践的には可能であると述べています。
ただし、この実践はショーペンハウエルにおいては、善意志の実践ということではなく、あくまで盲目の意志を指していると思われます。
ショーペンハウエルはカントの「物自体」を「意志」としており、終生そこから抜け出ることはなかったようですが、私に言わせれば、この「意志」も知性の領域にあり、真の「物自体」ではないということです。
真の「物自体」は完全に知性を捨て去らない限り、現出しないでしょう。
なぜなら、知性がある限り相対世界を超えられないからです。

それはさておき、ではなぜ人間の知性が世界の本質を捉えることが出来ないのか、という問題について次の第四篇「物自体と現象との対立に関する二三の考察」」に記述があります。
なぜ分からないのかを知ったところで、分からないことには変わりがないわけですから、意味がないともいえるでしょうが、ただ分からないよりは少しはましであろうということです。

つづきは次回にします。

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Author:magokorokara
私は学者でも、宗教家でもなく普通の社会人ですが、人生問題に悩んでいた若い頃読んだ本を長い年月というフィルターを通してみて、あらためて考えたことを整理しながら書いています。

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