人生問題の究極とは

人生問題をとことん追求していくと、神という概念に突き当たります。
ただし、推理推論の結果導き出されるわけではありません。
人間の知性によって導き出される結論は不可解です。
藤村操さんの「巌頭之感」に書かれているとおり、「曰く、不可解」です。
人間の知性の延長線上には神という概念は出てきません。

ではなぜ神という概念に突き当たるのかといえば、人間の不可知な部分を神と称しているからです。
ですから、正確にいえば人間が突き当たるのは不可知な領域ということになるでしょう。
不可知ではあるが、それがなければ世界そのものが存立し得ないものです。
たとえば、世界は人間が創ったものではありません。
最近の科学ではビックバンによって宇宙が始まったとされていますが、ではその先はいったい何だったのでしょうか。
無から突如として生まれたとすれば、もうすでにそこで論理の整合性から逸脱しています。
また、無限の過去より続いているとするならば、始まりは無いということになり、永遠に有であるということになります。
もちろん、科学でいう宇宙とは我々の認識し得る範囲を指しているのでしょうが。
いずれにしても、人間の認識には限界があり、不可知な領域が取り巻いているのです。

ところで、もし不可知な領域がなく全てが明らかだったらどうでしょうか。
世界の原因と結果が全て認識し得たら、それはおそらく死んだ世界でしょう。
なぜなら我々の認識は有限だからです。
我々は感覚器官を通して物事を認識し、さらに言語に置き換えて思考しています。
ですから、世界の真実の姿ではなく、我々が作り上げた仮構の世界を見ているのです。
つまり、我々は生命そのものを見ることが出来ず、その影を認識するにすぎません。
我々にとって明らかな世界とは、実は生命の無い無機質な世界なのです。

話は変わりますが、人間機械論などという議論があります。
人間をどう見ようと勝手ですが、機械には当然スイッチがあります。
では人間を動かすスイッチを押すのは誰でしょう。

ただここで問題なのは、人間が機械のように見えなくもないということです。
これは我々の認識自体に由来していると思われます。

そもそも、認識するとは物事を区別することです。
区別することによって、物事が固定された言葉や文字になります。
我々は言葉や文字によって思考しています。
ですから、我々の認識は区別し固定された概念によって形成されています。
ということは、我々は現象そのものではなく、自分で作り上げた概念で思考していることになります。
なぜなら、現象そのものには区別など無いからです。
たとえば生と死。
現代の医学でも、どこまでが生で、どこからが死かで問題になっていますが、これを厳密に定義することはできません。
なぜなら、境界をつけようとしているのは我々の認識であって、現象界そのものには境界など無いからです。
もし境界線を引こうと思っても、その地点は無限に分割し得るからです。

さて、話をもとに戻しますが、人生が不可解であるというのは以上のような訳で、真実の世界と我々の認識とのミスマッチによると思われます。
ですから、我々が抱く疑問や矛盾は全て認識上の構造によるものということになります。

繰り返しますが、我々は事物を固定した概念として捉えます。
現象は言葉や文字によって他と区別され、静止した状態として把握されます。
いわば真実の世界の影であり、虚構の世界です。
我々が言葉や文字による概念によって作り上げた世界観に不可知な領域が出来るのは当然のことです。
ただし、真実の世界といっても、我々はそれを認識することが出来ません。
それを言い表そうとすると、途端に相対的になってしまうからです。

仏教の維摩経の中に、主人公である維摩詰に文殊師利が真実の道を問う場面があります。
文殊師利はすでに「一切の法に於いて、言うこと無く、説くこと無く、示すこと無く、識ること無し。諸の問答を離るる」という説を述べています。
そこで、今度は維摩詰が答える番になる訳ですが、ところが維摩詰は沈黙したまま一言もしゃべらない。
これが答えなのです。
これが古来「維摩の一黙、饗雷のごとし」と言われる場面です。
一言でもしゃべれば相対的になってしまい、真実から離れてしまうからです。

さて、冒頭で述べた神という概念は、単に不可知な領域を指したものではなく、真実の世界であり、我々の本源として絶対的な世界を言い表していることは言うまでもありません。

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Author:magokorokara
私は学者でも、宗教家でもなく普通の社会人ですが、人生問題に悩んでいた若い頃読んだ本を長い年月というフィルターを通してみて、あらためて考えたことを整理しながら書いています。

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